2012/05/28

ブラジルへの道 〜アジア最終予選を前に〜

筆無精で有名な無名のフットボールコラムニスト・ジャンフランコ豊吉です。
以後、お見知りおきを。

しばらく更新しない間にフットボール界では様々なことが起こりました。
ロンドンオリンピック出場決定、まさかの鹿島低迷(その後復調気味)、
Jチームの監督交代、欧州シーズン閉幕(プレミア興奮、CL微妙)・・・などなど。
もうすぐブラジルワールドカップのアジア最終予選、そしてEURO、
ロンドン本大会と続きます。
いつも思いますがフットボールの世界は流れ(サイクル)が早いですね。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

さて、ブラジルワールドカップ アジア最終予選である。

ワールドカップの最終予選はまさに「絶対に負けられない戦い」である。
今回のレギュレーションでいうと「絶対に2位以内に入らなければならない戦い」
である。3位になってもプレーオフがあるので、ブラジルへの道が閉ざされる
わけではないが、グループAの3位チームを下しても南米との大陸間プレーオフが
ある。茨の道といえよう。「絶対に2位以内に入らなければならない戦い」なのだ。

日本の立場として毎回難しいのは予選と本大会で別のサッカーを展開しなければ
ならない点だ。つまり、比較的追われる立場となるアジアとチャレンジャーとして
挑む世界の強豪国とのサッカーではやはり別のサッカーにならざるを得ない。
近年はアジアのレベルアップ、そして日本自身のレベルアップによってその傾向が
やや薄れつつあるが、大勢としては変わっていない。欧州や南米のチームであれば、
予選で磨いた戦いをそのまま本大会へ持ち込めるが、アジアの場合は簡単ではない。
本大会ばかりを見据えて理想のサッカーを追い求め過ぎると、足元をすくわれる
可能性もある。それでなくてもアジア全体のレベルアップが感じられる昨今だ。
最終予選に関してはまずは「勝つ」ことに集中してほしいと思う。実際に戦う選手は
もちろん目の前の相手に勝つことしか考えていないだろうが、本大会に向けた対策は
予選通過が決まってからと日々の所属クラブでの活動で意識してもらいたいものだ。

日本代表の課題はここ10年変わっていない気がする。

「決定力不足」
「引かれた相手から点を奪う」
「相手のセットプレーとパワープレー対策」
「前線から速く組織的なプレスを受けた際の対応」

「決定力不足」は簡単に解決できる課題ではない。チャンスを多く作ることと
ストライカーの出現(個人的には本物のストライカーは育成できるものではないと
思っている。)を待つしかない。
「前線から速く組織的なプレスを受けた際の対応」はビエルサ監督率いるチリとの
親善試合など時々しか露呈しないが、課題としては残っている印象だ。
「引かれた相手から点を奪う」「相手のセットプレーとパワープレー対策」
この二つの課題は今回の最終予選で問われるところだろう。前者は中東勢3チーム、
後者はオーストラリアの対戦で実践の場が訪れるはずだ。
最終予選でのサッカースタイルをそのまま本大会へ持ち込むことは難しいが、
課題を克服することは本大会にもつながる。勝つことだけを追求する中で、
課題をクリアするような「解」が一つでも二つでも出てきてほしい。

「引かれた相手から点を奪う」方法はいくつかある。定石通りに考えるならば、
サイド攻撃、ミドルシュート、セットプレーだ。もちろんショートカウンターが
繰り出せれば一番効率がよいのだが、特にホームでの中東勢の対戦の場合はなかなか
尻尾を出さないと考える方が適切だ。
サイド攻撃で鍵を握るのはフィニッシャーだ。中央に鍵をかけるだろうから
サイドがある程度崩せることは想定できる。日本に久しぶりに現れた「飛び道具」と
なれるハーフナーマイクには特に期待したい。また、先日のアゼルバイジャン戦で
デビューした二人はその特長を早速発揮してもらいたい。酒井宏樹の鋭く曲がり
落ちる高速クロスもチームの武器にしていってほしい。どちらかというと中央での
プレイを好む香川から途中交代して縦に突破できる宮市を活かす場面もあるはずだ。
ミドルシュートは本田、長谷部、遠藤、中村憲剛に意識を高めてもらいたい。
セットプレーはやはりザックのピンチを二度救っている吉田に期待だ。
一方で、遠藤、香川、清武あたりが密集地帯をパスワークで崩すようなシーンも
観てみたいが、とにもかくにもまずは勝利を掴んでもらいたい。

繰り返すがアジア全体のレベルは上がっている。最終予選ともなれば尚更だ。
ワールドカップの予選に楽な試合など1試合もないが、これまで以上に相手の
レベルが上がっていると感じる。オマーンもヨルダンも侮れない。オーストラリアは
もちろんだが、イラクも相当手強いだろう。そんなレベルの高い相手だからこそ
日本の強さを見せつけてほしいものだ。