いよいよ2012年3月10日、20年目を迎えるJ1リーグが開幕する。まずは今年こそ何事もなく日程通りに開催されることを願いたい。
単純に予想するだけでは面白くないので、各チーム別のブレイク候補となる人物も列挙しながら今季の順位予想をしていくとしよう。(別ブログでは次にブレイクするフットボーラーの発掘をテーマにしています。)
※文中の[]表記の数字は背番号。
【Aクラス/上位争い】
優勝とACL出場権を争うグループ。
1位:鹿島アントラーズ
個人的願望も含まれていることは否定しない。だが、ジョルジーニョ監督はピクシー同様名将になる資質を備えた人物だ。選手時代に持っていたクレバーさプレービジョンの広さ、欧州での選手経験、コーチとしての経験、そしてインタビューやブラジルでの評判から伝わってくる人柄。彼もまたブレイク候補の一人である。ブラジル国内で最優秀監督賞の次点に選出されているという事実から、既にブレイクしているという見方もできるが、彼が本領発揮するのは2012年の日本からになる、そんな気がしてならない。優勝予想に挙げる最大の要因はジョルジーニョ監督の存在だ。戦術的にもダイヤモンド型の中盤を導入するなど、オリヴェリラ前監督が積み上げてきたベースを生かしつつ、底上げを図っている。新監督が来たことそのものすら巧みにチームの刺激を促す材料の一つにしている印象だ。確かに野沢、田代の流出は大きいが新監督と新加入選手のフレッシュな取り組みがダメージを感じさせないはずだ。
元々リーグNo.1のゲームマネジメント(コントロール)力があり、戦力的にも優勝を狙える陣容を擁している。今年はACLに出場しないこともリーグを戦う上では好都合だ。この20年間、フロントやスタッフ、選手、サポーターが三位一体となってジーコイズムを継承し続けてきた。Jリーグで唯一チームコンセプトが一度たりともブレたことのないチーム、オシム曰く「日本のバルサ」。それが鹿島である。黎明期に選手としてMVPにもなった男が監督として還ってきて迎える今季。この20年間のJリーグを牽引してきたチームに相応しい大団円を期待している。
ブレイク予想にはMF土居聖真[28]を挙げる。鹿島生え抜きプロ2年目のMFでポスト野沢に最適な選手。野沢、小谷野といった選手が移籍し出場機会は増えるはず。PSMでもキレのあるプレーを見せており、ボディコンタクトと飛び出し(動きの質)をレベルアップさせれば往年の増田忠俊のような選手になれるはずだ。なお、柴崎岳[20]と山村和也[4]の一年を通した活躍はもはやノルマだ。
ブレイク監督:ジョルジーニョ(新加入・47歳)
ブレイク選手:土居聖真(2年目・19歳)
2位:名古屋グランパス
ストイコビッチ体制5年目で確固たるベースの上に効率のよいピンポイント補強。今年も優勝候補の本命になることは間違いない。大崩れすることはなく安定した戦いを見せるだろう。ダニエル[22]の加入によって実現する3-4-3(個人的には千代反田がいる頃にも積極的にトライしてほしかった。)をオプションに留まらず、定着させることができたならACLとのダブルも狙える。だが、2位に予想した理由もやはりACLで、勝ち進めば勝ち進むほどコンディション維持が難しくなり、シーズン終盤で迎えるであろう鹿島ら上位陣との直接対決に敗れる可能性が高くなる。厚い選手層を活かしてローテーションを組めるか、妖精が振るうタクトに注目したい。
ブレイク予想選手は我が地元板橋区のゴールデンキッカーズ出身、ルーキーの田鍋陵太[27]。怪我がちなところが気になるが、三菱養和所属のU-16時代から注目されていたMFで、俊足を活かしたドリブルが持ち味。シーズン後半以降、ローテーションの中に絡んで出場機会さえ得られればブレイクする可能性が高い。
ブレイク選手:田鍋陵太(ルーキー・18歳)
3位:柏レイソル
昨季優勝した勢いそのままに今季も躍進するであろう。レアンドロ・ドミンゲス[10]やジョルジ・ワグネル[15]といった飛び道具が健在であればACLとの連戦でチーム状態が悪くても勝ち点を取れるはずだ。J2時代や昨季にも見せていた内容が悪くても勝つという試合をいかに増やせるかが今季も鍵を握る。それでも、そう簡単に連覇させてはくれないだろう。他チームから研究もされるだろうし、やはりACLとの連戦は厳しいものだ。また、五輪後に酒井宏樹[4]が海外へ移籍する可能性も高い。酒井の穴は横浜FCから移籍してきた藤田優人[27]が埋めるだろうが、途中から武器を失う影響は少なからずある。
ブレイク候補はリカルド・ロボ[25]。開幕当初はベンチスタートになりそうだが、最終的には得点王争いに名を連ねているだろう。今季の日立台では、二人のブラジル人MFのサポートを受けて豪快なシュートでネットを揺らすシーンが数多く見られることだろう。
ブレイク選手:リカルド・ロボ(新加入・27歳)
4位:FC東京
昨年の柏に続き、J2優勝チームがJ1で旋風を巻き起こす。そんな光景を想像させる体制を整えてきた。今季のハードスケジュールを見越してか、一級品は決して多くないが粒揃いの陣容を2チーム分保持している。オシム道場の門下生ポポヴィッチ監督のサッカーが浸透してくれば2年連続のACL出場権が転がりこんでくるはずだ。また、苦しい場面で昨季のJ2や天皇杯での経験が生きてくるだろう。
早速ゴールという結果を示している長谷川アーリアジャスール[8]、加賀健一[5]、太田宏介[6]といった移籍組、新人で五輪代表候補の丸山祐市[16]、レンタルバックの重松健太郎[24]とブレイク候補は多数存在するが、その中でも一押しは河野広貴[17]。年代別代表の頃から得意のドリブルで注目を集めていた逸材が意を決して自身二度目のJ1挑戦。ポポヴィッチのサッカーのアクセントになる魅せるプレイに期待したい。
ブレイク選手:河野広貴(新加入・21歳)
5位:セレッソ大阪
よくも悪くもオリンピックが大きく関係してくる。メンバーに選ばれるか、選ばれないか。ロンドンで手応えを掴み自信を付けて戻ってくるか、悔しさをぶつけるか、あるいはコンディションを下げてしまうのか。いい方に転んだ場合、元来攻撃的なこのチームが、勢いを増して手が付けられないといった状態に入る可能性がある。清武弘嗣[8]、キム・ボギョン[7]は夏以降に渡欧してしまうだろうが、新加入のブランキーニョ[10]、乾のセクシー同級生 村田和哉[26]、満を持して帰還した天才 柿谷曜一朗[13]とアタッカー陣には事欠かない。CFには本格的な点取り屋になり得るケンペス[9]が陣取る。あとは新監督のセルジオ・ソアレス監督がいかに守備を安定させられるかがチームの浮沈を握る。
ブレイク候補には柿谷曜一朗[13]を挙げたい。前述の通り、夏以降はチームを引っ張っていかなければならない。〜ユナイテッド時代2年目のC・ロナウドのように〜巧い選手から怖い選手に化けた時、不動のエースになっているはずだ。
ブレイク選手:柿谷曜一朗(レンタルバック・22歳)
6位:清水エスパルス
開幕当初は怪我人が多く、戦いが安定しないかもしれないが、ポテンシャルはある。ゴドビ体制2年目となりチームのベースも固まってきた。若手とベテランのバランスがよく、うまくまとまることができれば思わぬ躍進を遂げる可能性を秘めている。夏の中断期間にリュングベリ放出分の浮いた予算から賄う形でCFやCBといったセンターラインの補強を実現してほしいものだ。また、長谷川健太氏が監督をしていた時代の優勝争いの経験を活かしてほしい。
個人的には山本海人[1]もよいGKだと思うが、海外での経験を買って林彰洋[31]をブレイク候補としたい。海外では出場機会に恵まれなかったが、ディド・ハーフナーGKコーチのもとこれまでの鬱憤をJの舞台で晴らしてほしい。
ブレイク選手:林彰洋(新加入・24歳)
【Bクラス/中位争い】
上位進出を図るもACLには届かず、残留争いには巻き込まれないグループ。
7位:浦和レッズ
監督や選手が今季はベース固めで優勝争いまでは時期尚早ととれるような発言をしている。ペトロヴィッチ監督のサッカーが浸透するまで時間がかかるだろう。とはいえ、選手のタレントはリーグ屈指。惜しむらくは軸となるCFが定まらない点。夏にここを補強できればACL出場権も狙えるはず。ブレイク候補はプラチナ世代の小島秀仁[27]。柴崎に負けじとレギュラーに定着し、出場機会を増やすことだろう。
ブレイク選手:小島秀仁(2年目・19歳)
8位:アルビレックス新潟
隠れたストーブリーグの敢闘賞ではないか。千葉和彦や酒井高徳、チョら主力を放出したが収支はプラスといっていい。戦い方にも大きな変更はなく躍進の予感が漂う。ブレイク候補としてはまず真っ先に将来的な渡欧が現実路線のキム・ジンス[19]が挙げられるが、期待を込めて鈴木武蔵[28]を推したい。身体能力は折り紙付きで途中から出ても流れを変えることができるプレイヤーだ。まずはベンチ入りを目指したい。
ブレイク選手:鈴木武蔵(ルーキー・18歳)
9位:大宮アルディージャ
下位クラブを上昇させる請負人・鈴木淳監督体制3年目。そろそろ収穫の季節か。「本物」と噂されるボランチ・カルリーニョス[5]、五輪代表チョ・ヨンチョル[9]と即戦力となる外国人選手を獲得した。J屈指のストライカーであるラファエル[10]がゴール前の仕事に集中できるようになれば勝ち点を重ねられるはずだ。
ブレイク選手:カルリーニョス(新加入・29歳)
10位:川崎フロンターレ
よくも悪くも新外国人選手次第といえる。いい方に転べばACL出場権争いに加わる可能性もある。ブラジル国内でもリーグ屈指といわれるDFジェシ[5]のプレイは迫力がありそうだ。こういったCBがいると川崎伝統のカウンター戦術が採りやすくなる。また、川崎お得意の外国人コンバートでMFのレナト[10]が第二のジュニーニョになれるのか、相馬監督のお手並み拝見といったところだ。ブレイク候補は五輪代表入り当落線上の登里享兵[23]。
ブレイク選手:登里享兵(4年目・21歳)
11位:ヴィッセル神戸
的確な補強で戦力を大幅にアップさせて期待大といったところだが、和田監督のチーム統率力には疑問が拭いきれない。昨季のクラブ初の一桁順位は素直に評価すべきだが、各クラブで実績を重ねた選手たちを束ねるにはよりカリスマ性の高い監督が必要な気がしている。要は明確な基準のもとでハードワークを遂行させられるのか、にかかっている。野沢拓也[8]、田代有三[11]、伊野波雅彦[19]には活躍してもらいたい。独特の雰囲気(あるいは”間”)を持っている森岡亮太[14]をブレイク候補に推す。
ブレイク選手:森岡亮太(3年目・20歳)
12位:ガンバ大阪
フロントが舵取りを誤ったと見る。ガンバを優勝争いができるチームに変革した最大の功労者である前任の西野氏との契約更新見送りは仕方がないにしても、ライセンスのない呂比須ワグナーコーチを監督に迎えようとするなどフロントの拙さが際立ってしまう。結果としてセホン監督との実質的な二頭体制という歪な形になってしまった。うまくいっている時はよいが、うまくいかなくなった時、拠り所がはっきりしないのはよくない。そもそも優勝争いができていたのは西野前監督のチーム作りに拠る所が大きかったというのが小生の見解。今年は厳しい一年となりそうだ。そんな中、ブレイクを期待したいのは関西大学リーグMVPで得点王のMF阿部浩之だ。出場機会は巡ってくるはずなのでチャンスを活かして点に絡むプレイを見せてほしい。
ブレイク選手:阿部浩之(ルーキー・22歳)
【Cクラス/下位争い】
残留争いをするグループ。
13位:横浜Fマリノス
型を作るのに苦心しそうだ。継続性がなくどんなサッカーをしたいのか見えてこない。選手も要所がベテラン頼みなのが気掛かりだ。ブレイク選手は現在絶賛売り出し中の齋藤学[11]を挙げるほかない。次点は熊谷アンドリュー[28]。
ブレイク選手:齋藤学(レンタルバック・21歳)
14位:ベガルタ仙台
守備を固めてカウンター、からの上積みができるのかどうか。昨季は全力で闘い、これ以上ない素晴らしい成績を収めた。が、今季も同様にいくとは限らない。ブレイク候補は角田誠[6]。実績は充分で、いつ代表入りしてもおかしくない。代表に選出されれば全国区となる。
ブレイク選手:角田誠(2年目・28歳)
15位:サンフレッチェ広島
ペトロヴィッチ前監督と契約更新できなかった点が最大のマイナス要因。ドーハ組の森保新監督に期待がかかる。ブレイク候補は何といっても超高校級との呼び声高い野津田岳人[2種]。若手育成に定評のある広島ユースが輩出する将来の代表候補には期待せざるを得ない。
ブレイク選手:野津田岳人(2種登録選手・17歳)
16位:ジュビロ磐田
監督・選手ともに刷新。今季も厳しい戦いを強いられそうだ。ブレイク候補にはレンタル先の岐阜で結果と成長を示してきた押谷祐樹[14]を推す。
ブレイク選手:押谷祐樹(レンタルバック・22歳)
17位:サガン鳥栖
戦力的に厳しいと言わざるを得ない。苦しいシーズンが続くだろう。ブレイク候補は元U-17代表の岡本知剛[6]。厳しい戦いが予想される中、自ずと中盤の底での仕事が増えるはず。残留に向けた防波堤となれるか。
ブレイク選手:岡本知剛(2年目・22歳)
18位:コンサドーレ札幌
鳥栖同様、戦力的にJ1で戦えるレベルにない。ブレイク候補はロンドン行きを諦めていないであろう古田寛幸[15]。ルックスにもスター性を感じる。ベネチアにおけるレコバのようなチームを救う活躍を見たい。
ブレイク選手:古田寛幸(3年目・20歳)
順位予想のまとめは以下の通り。
1位:鹿島アントラーズ
2位:名古屋グランパス
3位:柏レイソル
4位:FC東京
5位:セレッソ大阪
6位:清水エスパルス
7位:浦和レッズ
8位:アルビレックス新潟
9位:大宮アルディージャ
10位:川崎フロンターレ
11位:ヴィッセル神戸
12位:ガンバ大阪
13位:横浜Fマリノス
14位:ベガルタ仙台
15位:サンフレッチェ広島
16位:ジュビロ磐田
17位:サガン鳥栖
18位:コンサドーレ札幌
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20年目のJリーグ、果たしてどんな結果となるのか楽しみです。
サッカーファミリーはもちろん、その外まで熱が広がるような熱い試合を見せてほしい!